グルブァクシ 解答篇

これはグルブァクシ 出題篇に対する解答篇となります。
読む場合は出題篇よりお読みください。


放り出されたスマホの画面を覗き見ると誰かのTwitterページが開かれていた。
「誰だこいつ?」
「ツイ2の現在ランキング二位の奴だよ」
そういってページをスワイプして見せる。
「情報化社会っていやなものだな。これを見るだけでこいつが一体どういう人間なのかがわかってしまう。こいつが学生であることもコンビニでバイトしていることもツイ2のラストオフ会に参加したこともすぐにわかってしまう。これだけの情報があれば、その人の事を知っている人間なら個人を特定することも容易い」
「じゃあ、まさか尾道が」
俺は先ほど電話で話した男性の声を思い出していた。
「まず間違いないだろうね。そして、店員と客以上の付き合いがあったはずなのに、その気配を電話では微塵もみせなかった点はどう考えてもおかしい」
むしろ、尾道はあの時点ですでに秋枝が死んでいたことを知っているはずなのだ。
「秋枝が死んでまだ半日だがランキング一位は未だに秋枝のままなんだ。ここでわかることは一位と二位の差というのは絶望的であったということ。秋枝はぶっちゃけいくらでも時間と使い切るつもりの金があったからもう生きている以上、一位は揺るがなかっただろうね」
「じゃあやっぱり自殺する気だったのか」
治は頷く。
「想像だけどね。そして、ここからの話は多分に想像が含まれるがまぁあまり気にせずに聞いてくれ。俺は神様じゃないし、人の心まで目で見ることはできない」
そういいながらも治はいつも確信を持って話をする。だから俺はこいつにゲームで勝てない。
「まず、尾道は初めから秋枝を殺すまで突飛な発想をしたわけではない。そう、まず財布を盗んだんだ。そうすることで現金的なダメージとそれ以上にクレジットカードを止めることができるからだ。
しかし、知っての通り秋枝は止まらなかった。止まる理由もないからね。秋枝にとっては生きた証、冥途の土産なのだから今更、金なんていう俗な現実に捕らわれる必要もない。
尾道は失敗を嘆いただろうが、まだ彼を支える優位性があった。だから、この段階では一位を諦めてもいい、と思っていたかもしれない。だが、それをも揺るがす事実が発表された。
マークⅡの復刻だ。尾道はすべてのキャラクターをコンプリートしていて、秋枝はマークⅡを持っていない。これくらいの情報交換は済んでいただろう。つまり、これでマークⅡまで取られたら尾道が秋枝に勝る点は皆無となってしまう。
それでも尚、人を殺すということは常人にとってハードルが高いはずだ。しかし、秋枝が自殺するつもりだということを知っていたとしたらどうだろうか?秋枝が死ぬことは確定していてその死期をたった二週間縮めるだけだとすれば、殺す、という発想に至ってもおかしくなくはないだろうか?事実、それで尾道は秋枝を殺したんだ」
俺は階段と崖を想像していた。発想の階段と崖。崖を一息に上ることは非常に困難だが、階段の様に段階的に分けられていたら、昇る難易度は格段に楽であろう。たとえ辿り着くところは一緒であったとしても。尾道にはその階段が用意されてしまった。一段昇るには罪悪感が薄い階段。気が付いた時には降りることは出来なかった。
「でも、見た目はどう見ても自殺だった。あれは一体どうやったんだ」
そうなのだ。毒殺にしても、不思議なまでに自分の意志で死んだとしか思えない死に方だった。
「そうだな。一平はオカルトを信じるかい。宗教ともいうんだったかな」
「オカルト?」
まさか、勝手に死が飛んできて取り憑かれたように身体が動いて死んだとでも言うんじゃなかろうな。
「ちがうちがう、そんな非現実的な話ではないよ。俺には少々信じられない話ではあるけどね。
神社でお守りくらい買ったことあるだろう?あれって本当に効くと思うかい?」
思わない。お守りを買ったくらいで何かが変わるとは思わない。
「でもお守りをドブに捨てたとしたら何か罰が当たりそうな気くらいはするだろう?」
「それは思うけど、いったい何の話なんだ」
「だから、あの儀式めいた自殺。あれがオカルトの産物なのさ」
残された赤いグラス、ウィスキー、不思議な文様の布。
「あれはガチャが当たるようにという願掛けさ。バカバカしい話ではあるが。
まず、キャラクターの属性に合わせた五つ揃いのグラスの内、対象の色のグラスにウィスキーを注ぐ。そして召喚文様の上に座り、それを一気飲みしてガチャを回す。すると、狙っていたキャラクターが出てくる。気がする。
これが秋枝が信じていたオカルトさ」
モンスターボールを投げるときにAボタンを連打することを大層にしたヴァージョンという理解でいいだろうか。
「だから、そんなオカルトをしていたことも尾道が知っていればあのタイミングで秋枝を殺すことはそんなに大変じゃない。事前に忍び込む、あるいは友人として堂々と上がり込む。そして、秋枝が自殺する為に用意してあった『毒を赤いグラスに盛っておく』。
そしてガチャの夜、秋枝は毒の盛られたグラスにウィスキーを注ぎ飲む。一気飲みをするという儀式だから味が多少変でも気付いた時には致死量さ」
「そんなん確実性がないじゃないか。グラスを洗うかもしれない。ガチャするより前に使うかもしれない。そんなんじゃ」
「別にいいんだよ。尾道は確実性は求めてないんだ。死んでほしいと願っただけで、死ななかったら死ななかったで自分が殺人犯にならなかったことに安心するだけ。むしろ、抜け道を用意することでも尾道の罪悪感は和らぐだろう。胸糞悪い話だ」
治は片目を瞑り、難しい顔をする。
「初めから自殺だと思って操作してないだけで証拠はいくらでも残っているだろう」
ただし、と治は続ける。
「どうせ、二週間後に死ぬ予定だった人間を殺したことをわざわざ暴き立てる必要があるのかどうか」
そうだな。どっち道、秋枝は死んだのだから。
 いかがだったでしょうか?今回のテーマはその名の通り「爆死」です。極神獣グルブァクシ。
情報の出し方が中途半端で出題篇が中途半端になったことをお許しください。
皆さんも課金はほどほどにしましょう。

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