ボクとマグマ星人と小さな戦士

 最近、世間をウルトラマンZが賑わしている。

 これは非常に喜ばしいことで素晴らしく有り難い話である。

 いや、まぁウルトラマンなんてのはガキが見るような低俗な茶番でね、私のような知的で大人で風格のあるインテリゲンチアには何の関係もない話でございますけどね。

 さぁ、ところかわって、数年前、夏、池袋、サンシャインシティ。

 察しのよい読者諸君ならもしかしたら気付いてらっしゃるかもしれませんが、そう、ウルトラマンフェスティバルの会場である。

 私は、夏コミに行くついでに東京に来たらウルトラマンフェスティバルに行くように決めている。これがウルトラ5つの誓いの内の一つである。

 まままままぁコミケ?なんてパンピここに究めりな生態系をしている私には関係のない場所ですけどね?つまり、行かないですけどね?ということはウルフェスになんて当然行かないんですけどね?

 というわけで毎年ウルフェスに来ているわけですが(夏はウルフェス!)、その年も当然行った。正直、コミケとの過密スケジュールになることも多く、最後のショーにギリギリ間に合うタイミングで会場に駆け込んでショーを見て大満足ミカンすることもある。が、無理してでも行く。それほど、特別な場所なんだ、ウルフェスは。

 その年は、友人と2人で行った。ちなみに、私はタロウ党で、友人はジャック党である。ジャック?ジャックってなんだよ、新マンだろ、だってタロウのウルトラ6兄弟回でもウルトラマンの渾名をつけてる家族かなんかが出てきて「新マンだ!」って紹介してたし、新マンが正しいに決まってるんだ!エース党の方は2世を推すのかもしれないから、そこは仲良く兄弟喧嘩しよう。

 ということで華麗にスワローキックを決め込んで会場入りした私と友人。

 ショーやアイス屋さん(クレープ屋さんだったりもする。ここでタロウ味を食べるのがウルトラ5つの誓いの二つ目)があるところまで辿りつくまでの間に様々な展示がある。

 この展示は少年心を大層くすぐるのだが、その展示の内の一つに「スペシウム光線を撃ってる風の写真が撮れるフォトスポット」があった。

 私は周りを見渡した。

 二度目になるが私はタロウ党である。

 つまり、こんなスポットに来たら、やるポーズは1つに決まっている。

 グーチョキパーでグーチョキパーでなにつくろう?なにつくろう?

 右手はパーで左手はグーで……

 —ストリウム光線—

 きゃっきゃっ!

 そうやってフォトスポットでポーズを取って、友人に写真を撮らせるボクはノリノリでウルフェスをたのs……

「何ふざけてんだてめえ」

 

 突然、おっさんの怒鳴り声が聞こえた。

 明らかにボクに対して発された声である。

 めちゃくちゃビックリした。寿命が20年縮んだ。ウルトラダイナマイト1回分は減った。

 スペシウム光線のコーナーなのに、ストリウム光線のポーズを取っていたのが気に障ったのかもしれない。

 いや、そもそもこんなところで大の大人がポーズを取って写真を撮っているのはよろしくないかもしれない。

 この場に来る人達でやっぱり優先されるべきなのは子ども達であり、ボクらはこの場に間借りさせてもらっているだけだという自覚はある。

 だからこそ、写真を撮る前に周りに順番を待っている子どもがいないことをしっかり確認し、子どもの邪魔をしないように気を付けていたつもりである。

 しかし、気が付けば次にお母さんに連れてきてもらったと思しき、少年が並んでいたので、ボクは思った以上にここで時間を使ってしまったかもしれない。これは反省すべき点である。

 だからといって公共の場で見知らぬ人間に突然大声で怒鳴りつける野郎はそっちの方が常識がないと思うし、そんなことする非常識なおっさんは一体どこのどいつだ?と思って後ろを振り返ると……

 マグマ星人だった。

 ボクを怒鳴りつけたのはそのへんのおっさんではなく、マグマ星人だったのである。

「シャキッとしろ、ふざけないでもっとしっかりポーズとれ」

 続けざまに怒られたボクだったが、いや、もうマグマ星人がいうならそりゃ正しいわ。

 ボクが悪いわ、腑抜けてましたわ。

 ボクは背筋をピンと伸ばし、顔から笑顔を消し、凛とした表情で左手の拳に右手を乗せた。

 パシャリ。

 いい写真が撮れたと思う。

 流石、マグマ星人だ。マグマ星人のおかげでボクは本当にストリウム光線出せたと思う。

 ボクは大変清々しい気持ちだった。

 しかし、皆さん、忘れてはいけない。

 マグマ星人は悪い異星人だということを……。

 自分の番も終わり、次の親子連れに早く場所を譲ろうとすると、そこにはもうぐっちゃぐちゃに大泣きをしていること少年がいた。

 もう本当に大泣きである。

 当然だ。

 大人が怖い怖いマグマ星人に虐められている現場を目撃してしまったのだから、泣くな、という方が無理な話だ。

 しかし、彼は勇敢だった。

 怖くて怖くて仕方がないはずなのに涙まみれの瞳でしっかりとマグマ星人を見据えて、右腕と左腕をクロスさせた。

 そのとき、右腕のマイナスエネルギーと左腕のプラスエネルギーがスパークし、まばゆいばかりの光線が発射されたのである。

「ギャーーーーーー」

 マグマ星人は唸り声をあげて木っ端みじんに(壁の向こう側へ)消えていった。

 少年は、いや、小さな戦士は真にスペシウム光線を撃ち、悪い異星人を撃退したのである。

 この地球には悪いことがいっぱいだ。

 理不尽に怒られ、責められる。ボクがこんなに真面目に働いてるのに悪いことをして楽して金儲けするやつだっていっぱいいる。

 実際の地球はどんな悪いことをしたって、最後に立っていた方が正義だ。

 悪いことしたって騙される奴が悪い。

 しかし、その後も泣き止まず母親に抱かれる小さな戦士を見て、ボクは彼がいれば、地球だってまだまだ捨てたもんじゃないぞ、と思うことができたのだった。

 ところでストリウム光線の話に戻るんですけど、あのポーズが最高にかっこいいのもさることながら、タイガのストリウムブラスターを撃つときのヌルっとした動きが大好きなんですよ、なんていうか必殺技のポーズって今まで、一瞬でバシッとかっこよく決め込んだ方がいいと思ってたんですけど、あのステップを踏んでポーズを、え?綺麗に話を終わらせたんだから、余計なこと言って余韻を壊すんじゃないって?こりゃまた失礼いたしました。ジュワッ!

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